活動報告

石井登志郎・西宮市長インタビュー⒅★190111――市場関係者のやる気を支援

投稿日 2019年1月11日

私は昨年9月20日、西宮市役所で石井登志郎市長にインタビューをしました。その詳報をこのブログで25回にわたって連載します。毎週火曜日と金曜日に掲載します。

市卸売市場の再整備事業についての石井市長の考えは。

石井市長 「最大の問題意識は公設の卸売市場を現状のままでずるずると続けてはいけないということです。台風で屋根が飛んでしまいかねない市卸売市場の古い建物が多く残っている状況を何とかしなくてはいけません」

かんの 「市卸売市場のあるJR西宮駅南西地区は西宮の玄関口です」

石井市長 「この地区に高層マンションを建設することの是非と容積率の移転に対する批判については十分に承知しています」

かんの 「市卸売市場の再整備事業では、民設民営の新卸売市場が誕生し、公設市場はなくなります。しかし、市は約10億円の公的負担を行い、地権者としての関与が続きます」

石井市長 「市の関与が続くことへの懸念があることも承知しています。容積率を新市場の部分から高層マンションに移転することで、新市場用地の将来利用について制約がかかるという指摘もその通りだと思います。しかし、中央運動公園及び中央体育館・陸上競技場の再整備事業とも相通じることですが、私の知見の及ぶ範囲では、この再整備事業が一番良い案だと思います。しかし、もっと良い案が存在するとすれば、いくらでも変更する余地はあります。もちろん、最終決定するまでの期間限定の話ではありますが…」

かんの 「私は市卸売市場が公的な役割を終えつつあるという認識をもっています」

石井市長 「その通りだと思います」

かんの 「せっかく新しい卸売市場を作っても店舗が次々に撤退するのではないかという危機感を多くの市民がもっています」

石井市長 「JR西宮駅前の再開発ビルであるフレンテ西宮と状況が似ていると思います。フレンテ西宮の入居状況も楽観的ではありません。新卸売市場についても正直言って、100%大丈夫と言うつもりはありません。再整備事業についても改善の余地はあると思っています。ただし、私は今の段階でこの事業を止めるという立場ではありません。この問題で政策判断の責任を問われるのはもちろん、当局の担当者ではなく、政治家である市長であり、市議会の議員の皆さんです」

かんの 「私たち議員もこの問題に大きな責任があると考えています。再整備事業では約10億円の公的負担を行います。私たち『会派・ぜんしん』は経営の見通しが判然としない新卸売市場のために市民の皆さんの大切な税金を安易に使うことに反対です」

石井市長 「その主張は理解できます。その一方で、市卸売市場は毎日、運営され、それなりの取引量があることも事実です。今すぐに市場の全てをやめてしまうわけにはいきません。公設市場から民設市場に移行したケースはあっても、市場を完全に廃止したという事例は全国でもあまりありません。西宮市の人口は急減しているわけでもなく、食のマーケットはあります」

かんの 「流通を取り巻く環境は大きく変化しています」

石井市長 「全国チェーンのスーパーマーケットは一括して仕入れるから市卸売市場を利用する可能性はありません。しかし、地方のスーパーマーケットのトップからは『今は市卸売市場で買っていないけれど、良いものがそろったら、利用させていただくかもしれません』と言っていただいています。だから、再整備事業で新卸売市場の経営が軌道に乗ることも夢物語ではないと考えています。前に向かってがんばっていこうとしている市場関係者を支援するため、再整備事業を進めるというのが今の私の考えです」

かんの 「今のスキームの中で改善できる余地を考えていくというのが市長のスタンスですか」

石井市長 「そうですね。将来において『ここは昔、公設市場だったけれども、今はこういう形で民設市場でうまくいっている』と評価されるようになればと願っています。開発計画については一定、進んでいますが、ソフト部分はまだまだ改善できる余地があると思います。欧州のようなマルシェの組み込み方などの工夫はいくらでもできます」

かんの 「市の対応は」

石井市長 「市にはビジネスの知恵がないから、口出しをしてはいけません。市は地権者として残りますから意見を申し上げますが、市場関係者の皆さんがやっていただくスキームに、市としてインセンティブがつける形になるでしょう。しかし、20年先に新卸売市場の店舗が歯抜けになっていたら、私は事業を進めた市長としての責任を問われるでしょうね。そこは理解しています。それでも、語弊を恐れずに言えば、再整備事業をストップさせるだけの強い理由は見当たりません」

石井登志郎・西宮市長
石井登志郎・西宮市長

※⒈西宮市卸売市場について

西宮市議会は平成30年3月22日の3月定例会で総額約1780億円の平成30年度一般会計予算案を賛成多数で可決しました。私が所属する「会派・ぜんしん」はこの予算案に西宮市卸売市場の再生整備事業に関係する費用が盛り込まれたことを問題視し、予算案の採決に加わらず、退場しました。

市はJR西宮駅南西地区の公設市場と民設市場で構成される市卸売市場について10億1000万円の公的負担などによって1つの民設市場として現在地で再生整備する事業を進めており、平成34年度の完成を目指しています。

会派・ぜんしんはこの事業について巨額の公的負担をするにもかかわらず、

  1. 多くの市場関係者が後継者不足などで事業継続が難しく、新市場の継続性に疑問
  2. 卸売市場を経由して市内で消費される青果は1割程度で、流通拠点としての必要性が不明
  3. 新市場を運営する新開設者法人が市に支払う新市場の土地・建物の賃料はかなり優遇される見通しで、市の支援策としての妥当性に疑問

などの多くの課題があることを指摘してきました。

市はこれらの指摘を考慮せず、一般会計予算案に市卸売市場の再生整備事業に関係する費用を盛り込みました。このため、会派・ぜんしんは平成30年3月定例会の予算特別委員会民生分科会で再生整備事業に関係する費用を削除するため、一般会計予算の修正案を提出しました。しかし、修正案は否決されました。
会派・ぜんしんはこうした経緯を踏まえ、一般会計予算案について

  1. 課題の多い市卸売市場の再生整備事業が含まれている以上、賛成できない
  2. 再生整備事業以外については特に問題は見当たらないうえ、会派・ぜんしんが反対して否決された場合、市民生活に及ぼす影響が大きい

との判断から、採決に加わらず、退場しました。

私は平成30年3月22日の本会議で会派・ぜんしんを代表して意見を表明。この事業の課題を指摘したうえで、「市は公共施設の総延べ床面積を20年間で10%削減する目標をたてているが、目標達成のための計画策定は進んでおらず、実態として総延べ床面積は増加傾向。こうした計画がないまま、課題の多い再生整備事業を進めることには大きな疑問がある」と訴えました。

西宮市卸売市場
西宮市卸売市場

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