私は7月、藤岡謙一・西宮市教育委員会教育長にインタビューをしました。3月まで文部科学省初等中等教育局幼児教育課長だった藤岡教育長は「子供1人1人に寄り添う教育を充実させたい」との意向を表明。全国学力・学習状況調査の結果などのデータやICTを総合的に活用し、児童・生徒への理解を深める取り組みを進める方針を示しました。インタビューの一問一答の詳報を5回にわたって掲載します。
―西宮市の印象は。
「文教住宅都市宣言の通り、総じて文化的で落ち着いた住環境の街だと思う。先生方も職員の皆さんも真面目で熱心な方が多い」
―任期が重松司郎・前教育長の残任期間の2年間と短いですが。
「確かに比較的短く、ゆっくりしてはいられないという感覚がある。職務に対するPDCAサイクル(※)を回すにあたって、PDCAの全部をやることは正直言って無理だ。Plan(計画)を立てて、Do(実行)に取りかかれるぐらいのことを考えたい」
―教育委員会と各学校の役割分担は。
「制度的に学校長に大きな裁量が与えられており、教育内容は基本的に学校に委ねる。教育委員会は子供の安全に関わること、つまり、いじめへの対応や事故防止、犯罪の抑止、感染症対策などについて主導して考える。各学校単独で決められない課題、例えば、部活動の地域移行や教員の働き方改革についても教育委員会が全市統一的に進めた方がいい」
―市長並びに市長部局とどのような関係を結び、連携を進めますか。
「子供たちをめぐる課題で学校などの教育分野だけで解決できるものは少ない。貧困や共働き家庭の増加をはじめとする家庭環境や社会の変化に合わせて様々な問題が生じている。保育所に通う子供の数が幼稚園に通う子供より多くなっている。保育所は市長部局の子ども支援局が所管している。子供たちの成長や学びについて考えた場合、教育委員会と接点が多いのは子ども支援局や健康福祉局などの市長部局だ。子供をめぐっては教育と福祉の線引きが簡単にできるような状況ではなく、縦割りで行政サービスを進めるのは良くない。子供たちの健全な成長を支えるためには、教育の観点も福祉の観点もともに大切だ。市長部局と教育委員会が一緒になって子供たちを支えていくことが求められており、連携すべきところはしっかりと連携していく」
(※)PDCAサイクルとは Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のプロセスを回し、マネジメントの品質を高める手法。
藤岡謙一(ふじおか・けんいち)氏の略歴 昭和49年3月、神奈川県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修了。平成11年、文部省(現在の文部科学省)に入省。横浜市立旭中学校校長、在中国大使館参事官、スポーツ庁政策課学校体育室長、文科省初等中等教育局幼児教育課長などを経て今年4月から西宮市教育委員会教育長。