私は9月20日、西宮市役所で石井登志郎市長にインタビューをしました。その詳報をこのブログで25回にわたって連載します。毎週火曜日と金曜日に掲載します。
西宮市の特徴についての市長の感想は(その2)
かんの 「市役所はある意味で小宇宙になっているということですか」
石井市長 「ある意味で小宇宙になっています。その小宇宙が職員にとっては居心地がいいのだと思います」
かんの 「もっと多面的な見方は必要ということですね」
石井市長 「多面的な見方が必要な部分はあると思います。ただし、悪い意味ではなく、居心地がいい組織であれば、つまり『役人特権』という意味ではなく、職員同士が顔見知りで性格を知っていれば、業務が円滑に進む面もあります。そこはバランスの問題だと思います」
かんの 「内部の論理が強くなりすぎると、だめですね」
石井市長 「そうですね。例えば、災害対応では局長同士は何十年も知り合いですから、ある局長が他の局長から新たな対応を求められ、その局長に対して『そんな対応をさせられたら、うちの局はもちません。あなたもうちの局の内情をわかっているでしょう』と発言したこともありました。その時、私が『もたないと言われても、皆さんには長い経験とノウハウがあるのだから、やり方を考えて実行してください。これは市民からみれば、やらなければいけない対応ですから。反対にこれまで当然のように行ってきた業務でも市民からみれば、やらなくてもいい内容もあるでしょう。その部分は整理してください』と申し上げました。こうした面で私は孤軍奮闘状態になることもあります」
かんの 「具体的にはどういうことですか」
石井市長 「9月4日の台風21号の襲来の時、本市は24の避難所を開きました。災害時には慣習的に同じ場所を同じ数だけ開設しています。毎回、市民が避難してくる避難所もある一方で、誰も来ない避難所があります。毎回、誰も来ない避難所は地区の住民の皆さんにとっても合理性がないのかもしれません。その一方、台風21号の際は台風の通過後も市内で停電が続いていました。災害対応は風雨や浸水だけではありません。停電対応はほとんどの職員にとって未経験でした。それについては職員のシフトを変えて対応する必要がありました。その時に『もたない』という議論がありました。そこで私は『もたないではすみません。もたしてください。どうもたないのかを説明してください』という話をしました。つまり、私はこれまでの市の慣行だけでなく、市民がどう考えているかとか、近隣市はどう対応しているかといった多角的な視点で判断して市政を運営しようと考えています」
かんの 「PDCAサイクルを働かせることも大切です」
石井市長 「もちろん、そうです。今はまだ、その部分についてはPDCAサイクルを回せていません。今後、検証しようと思っています」
※⒈避難所とは
災害などで自宅が被災した市民が一定期間、避難生活を送る施設で、市が指定したもの。
※⒉PDCAサイクルとは
事業活動などでの生産管理や品質管理といった管理業務を円滑に進める手法の1つ。計画(Plan)と実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。