鬼怒川の氾濫と同じ降雨量なら、武庫川でも堤防が決壊する恐れがあります。安心できるまでの防災インフラが整うのはずっと先。早めの避難を心がけてください。
茨城県常総市の堤防決壊による鬼怒川の氾濫被害では、多くの犠牲者を出し、大勢の住民が家屋を失い、避難生活をしています。ご遺族に心よりお悔やみ申し上げ、被災された方々にお見舞い申し上げます。私たちは今回の氾濫被害の教訓を武庫川などの防災対策に徹底的に生かさなければならないと思います。
「鬼怒川の氾濫と同じ降雨量なら、武庫川でも堤防の決壊が起きる可能性がある」というのが兵庫県や西宮市などの防災担当者の間で共有している危機感です。
武庫川は県が総合的な治水対策として川底を掘り下げるなどの河川改修工事を実施しています。水を流す流下能力は現在、河口から上流3キロ付近で毎秒2600立方メートルと昭和62年に比べて1.7倍になっています。県は戦後最大の洪水だった昭和36年の洪水の流量毎秒3510立方メートルを安全に流すための河川整備を平成42年度までに完了させる計画を進めています。※写真は武庫川
しかし、平成16年の台風では流量毎秒2900立方メートルの洪水が発生。これによって流域では道路が崩れ、橋が流失するなど大きな被害が出ました。豪雨の猛威に襲われれば、武庫川で今後、水が堤防を越えるや堤防決壊が発生する危険性があります。
全世帯の半分以上が浸水の想定
ハザードマップによると、甲武橋付近や国道2号北側付近などの武庫川の各所で堤防が決壊した最悪のケースでは、西宮市全体の2割弱にあたる約1900ヘクタールが浸水するとのことです。浸水の深さは居住地域で最大3メートル未満です。市役所などの市中心部も浸水し、一部は夙川まで到達。全世帯の半分以上にあたる約11万1000世帯が浸水します。市立南甲子園小学校や今津小学校、甲子園浜小学校の校区にも大量の水が押し寄せてきます。尼崎市などを含めた県下全体で約110万人が被災し、被害額は約18兆円に達するとのことです。
武庫川の防災インフラが早急に安心できるレベルまで達しない以上、全員の市民が安全かつ迅速に避難できる体制づくりを進めなければいけません。
鬼怒川の氾濫では自治体の避難指示など避難情報が出なかったり、遅れたとの批判がありました。また、防災行政無線の音声が聞こえなかったとの指摘が多く出ました。
西宮市は「本市では、河川の水位を基に避難情報を適切に発令することにしている」としています。防災行政無線の音声は豪雨などの悪天候の状況では聞き取れないことがあるとのことです。報道などでは、鬼怒川の浸水地域は自治体が作成したハザードマップでの予測とほぼ一致していたとのことでした。
これらの事実から得られた教訓はまず、市民として西宮市の防災マップやホームページで洪水ハザードマップを調べて自宅や自分と家族の勤務先、学校などが浸水想定地域に入っているかどうか、浸水の深さ、指定避難所の位置などを確認することです。
災害時に携帯電話やスマホに避難情報などの緊急メールが届く「にしのみや防災ネット」に登録することも重要。災害時に電源が自動的に入って防災行政無線の放送内容を最大音量で流す西宮コミュニティFM放送「さくらFM」(78.7メガヘルツ)の緊急告知ラジオの購入については市が補助金を出しています。
洪水が発生しそうな状況になれば、市のホームページやNHKとサンテレビのデータ放送(dボタン)などの多くのメディアを活用して災害情報を入手し、早めの避難を心がけてください。
避難する際は原則、2人以上で行い、浸水した場所を歩く場合は水路や溝、マンホールに要注意。市は周囲が浸水して危険な状況であれば、無理せずに自宅の2階で救援を待ったり、近くの頑丈な高い建物に避難するように呼びかけています。
新川などの洪水対策を推進
新川などの中小河川の洪水対策も重要です。県や市によりますと、新川の流下能力は毎秒29立方メートルで、20年に1度の大雨でも越水したり、堤防が決壊することはないとのことです。
海が高潮で川水が自然に流れない時でも周辺地域が浸水しないように、河口にある新川排水機場の大型ポンプで川水を海に排出するとしています。
市は新川に流入する雨水量を調整するため、上流域の学校の校庭や公園での雨水貯留を強化していく方針です。※写真は新川
あらゆる面から取り組み強化
私は9月30日の市議会9月定例会の決算特別委員会総務分科会で武庫川などの洪水対策を取り上げました。今後も、
- 市として県の河川改修工事の積極推進を支援して流下能力の早期増強を図る
- 建物への浸水を防ぐために一定の効果がある止水板を設置する市民に助成する制度を新設する
- 学校の校庭や公園での雨水貯留の強化や下水管の増強によって河川への雨水の流入を減らす
- 市民が安全かつ迅速に避難できるように、避難情報を適切に発令できる体制を構築できているかどうかを検証するとともに、災害情報をもれなく市民に伝達する体制づくりを図る
- 高齢者や障害者、外国人などの災害時要援護者の避難を支援する地域の組織づくりをサポートする
- 新川などの中小河川についても万全な洪水対策を実施する
などのあらゆる面からできる限りの取り組みを進めます。