活動報告

かんのニュース★220221――西宮市医師会の伊賀俊行会長にインタビュー

投稿日 2022年2月21日

私は令和3年11月、西宮市医師会の伊賀俊行会長に新型コロナウイルス感染症の対策についてインタビューをしました。伊賀会長は感染拡大期において入院待ちの自宅療養者数を減らすため、コロナ病床の空床情報などについてリアルタイムで確認できるシステムを構築するとともに、市独自の宿泊療養施設を設置することを求めました。

インタビューの中で、伊賀会長は令和3年で医療体制が最も逼迫した4月下旬から5月中旬にかけての第4波のピーク時について「本来なら入院が必要な中等症から重症の患者も自宅療養を余儀なくされた」と述べ、深刻だった状況を指摘しました。

市によりますと、市がコロナ患者の入院について市内の医療機関と調整する一方、コロナ病床が満床になるなどで市内の医療機関の受け入れが難しくなった場合、兵庫県に市外の医療機関との調整を依頼しています。しかし、第4波のピーク時には市内の医療機関のコロナ病床が満床になり、県に依頼したものの、自宅療養のまま待たされる患者が続出したとしています。

伊賀会長は「現場の医師には市の保健所を通じて県の情報が入ってくることになっているものの、県と市の連携が不十分なため、医師が自宅療養中の患者に『いつ入院できるのか』などについて十分に説明できなかった」と指摘しました。

伊賀会長は「『1泊で翌日は必ず他の病院に移送してくれるのなら、1泊だけコロナ患者を受け入れてもいい』などと協力を申し出てくれる病院は多かった。しかし、入院調整は行政が担当しているため、せっかくの申し出を生かせなかった」と語りました。

そのうえで、「入院調整や患者の移送を柔軟に行うためには、コロナ患者対応病院の空床情報などをリアルタイムで確認できるシステムを構築して、行政を介さずに病院や診療所の間で調整する体制を整える必要がある。県と市が連携して、このシステムを構築してほしい」と要望しました。

第4波のピーク時には、医療スタッフが常時、監視できる宿泊療養施設よりも、病状確認の機会が少ない自宅療養に重症者が多いという逆転した状況も生じました。

伊賀会長はこの再発防止策として「宿泊療養施設については県ばかりでなく、市も独自で設置して西宮の患者を受け入れる体制をつくってほしい」と要望。市独自で宿泊療養施設の入所と在宅往診対応を調整するシステムの構築も求めました。
伊賀俊行会長インタビューの主な一問一答は以下の通り。

――新型コロナウイルス感染症への市や医師会のこれまでの取り組みについてどのように評価しますか。

「西宮市医師会は自宅療養患者に対する往診チームを結成し、会員の医師が市保健所の要請に応じて患者の自宅を訪問した。医療体制は令和3年4月下旬から5月中旬にかけての第4波のピーク時の方が7月から9月にかけての第5波の時よりも重症者が多く、逼迫した。私たちが一番、困ったのは第4波のピーク時、現場の医師たちが入院待ちで自宅療養中の患者や家族から『いつ入院できるのか』などと聞かれても、情報がないため答えられなかったことだ。このため、患者や家族の不安を解消することができなかった」

■県と市の連携が不十分

――市は第4波のピーク時、市内の医療機関の受け入れが難しくなったため、兵庫県に市外の医療機関との調整を依頼しましたが、自宅療養のまま待たされる患者が続出したと聞いています。なぜ情報が届かなかったのですか。

「現場の医師には市の保健所を通じて県の情報が入ってくることになっているものの、県と市の連携が不十分なため、コロナ病床の空床情報などが十分に提供されない状況が続いた」

――それは深刻な問題ですね。

「市の保健所が自分たちで入院調整をすれば、『あと何人待ちです』と現場の医師に連絡できる。県に入院調整を依頼している場合、保健所は『この患者は重症化しそうだから、優先して入院させてほしい』などと県に要望することしかできない。保健所は感染拡大期において業務に忙殺され、現場の医師への連絡回数が減った。県も同様の状況だったのだろう。しかし、どんなに忙しくても必要な情報を関係者の間で共有できるシステムを構築する必要がある」

■県にもっと現場の医師の声を

――これは構造的な問題ですか。

「西宮市はもともと、県と情報交換をしにくい環境にある。例えば、県の知事・副知事や各部長らで構成する新型コロナウイルス感染症対策本部会議に政令市である神戸市は参与として出席しているが、それ以外の市町は呼ばれていない」

――県は本部会議終了後に記者発表資料を各市町にメールで送信していますが、会議録までは送っていません。

「医師会についても県の医師会が参与として出席しているだけだ。現場の医師の声をもっと県に伝える仕組みをつくってほしい」

■他の患者の受診抑制が心配

――長引くコロナ禍で心配していることは。

「私たちが懸念しているのは感染を恐れた他の患者の受診抑制が続いていることだ。どこの病院や診療所も患者が大幅に減っている。多くの高齢者は外出せず、自宅にこもっている。このままでは認知症患者が増えそうだ。糖尿病患者は血糖値が高いままでも自覚症状が少ないから、放置するケースが多い。私は眼科だが、緑内障患者の中には1年以上、診察を受けに来ない人もいる。そんな人たちの5年先や10年先が心配だ。感染状況がある程度、落ち着けば、積極的に受診してほしい」

西宮市医師会とは 医師会は日本医師会と都道府県医師会、郡市(区)医師会の3種類があり、それぞれ法人格をもって独立し、互いに連携しています。西宮市医師会は郡市(区)医師会の1つで、大正14年に設立。病院や診療所など468機関と、開業医や勤務医ら855人の会員で構成しています。
新型コロナウイルス感染症の対策事業としては西宮市PCR検査センターを運営し、発熱等診察・検査医療機関を指定しています。ワクチン接種事業については医療従事者の優先接種事業や高齢者等の集団接種事業を運営。市との協議により個別接種に係る円滑化を図り、病院や診療所での個別接種を進めています。

伊賀俊行(いが・としゆき)氏の略歴 昭和33年3月、兵庫県生まれ。神戸大学医学部卒業。神戸大学医学部助手、赤穂市民病院眼科部長などを経て平成9年から伊賀眼科クリニック院長。西宮市医師会では副会長などを経て令和2年から会長。西宮市学校保健会会長。西宮市社会福祉協議会理事。

令和3年の市内の自宅療養者数 西宮市保健所によりますと、令和3年の市内の自宅療養者数が最も多かったのは第5派の8月27日の793人。第4派のピーク時の5月3日は227人でした。

伊賀会長
かんののインタビューに答える伊賀俊行会長=染殿町

伊賀会長とかんの
伊賀俊行会長(左)とかんの=西宮市医師会

 

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